地域に根差し、独自の家づくりを実践している当会所属の地域工務店。しかし一方で、住宅性能や仕様において、全社統一の基準も定めています。

それは、生涯にわたって、住まい手やそのご家族が健やかに暮らし続けるために必要な「最低基準」。どのような住宅会社で建てるにせよ、この基準を満たしていなければ、不安を感じ続けることになりかねません。
私たちが定める基準は以下の通り。家づくりを検討しているあなたには、ぜひ覚えておいていただきたい項目です。
1、家守り制度
住宅会社選びにおける不安の一つは、あなたが建てた住まいを「その住宅会社がずっとサポートしてくれるのか?」ということ。住宅会社の廃業や倒産、撤退など、将来的なリスクを感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
その場合、大切なのは住宅会社同士の “横のつながり” 。
万が一、あなたの家づくりを担った工務店が事業活動を停止しても、『未来へつなぐ工務店の会 関西』の会員工務店で、あなたの家の点検やメンテナンスを引き継ぎます。安心して、会員工務店との家づくりを進めていただければと思います。
2、認定長期優良住宅
短命な日本の住宅を長寿命なものに転換していくために2009年にできたのが「長期優良住宅認定制度」。
20〜30年で寿命を迎え、不動産価値がゼロ円になってしまう日本の住宅を、100年の長きにわたって使い続けられるように、そして将来的にも社会的資産として扱えるようにと生まれたものです。
その中では、耐震性、断熱性(省エネ性)、劣化対策、メンテナンスのしやすさなどが要項として定められています。
十数年の月日が経って、普及率はまだ40%程度の制度ですが、私たちはこれも全棟で実践すべきものだと考えています。
3、住宅性能評価(設計&建設)
日本の家づくりには、残念ながら公的な検査がほとんどありません。
「耐震性や断熱性の高い家を建てたい」とあなたが思っていたとしても、その希望通りの設計図になっているかを厳密にチェックしてくれる第三者はいませんし、例え設計図が素晴らしくても、その通りに現場が施工されているかをチェックしてくれる第三者もいません。
設計・建設の二つのフェーズをチェックしてくれる唯一の公的な検査が、「住宅性能表示制度」に基づいた住宅性能評価。
目に見えない住宅性能を確かなものにするために、ぜひ導入いただきたい制度です。
4、許容応力度計算での耐震等級3
家づくりにおいて、決して疎かにできないのが “地震への備え” です。
日本は世界有数の地震大国であり、住まいに求められるのは「一度の大地震で倒壊しない」だけでなく「繰り返しの揺れにも耐え、長期にわたり暮らしを守ること」です。
家族の命を守り、災害後も住み続けられる住まいを実現するために、構造部材一本一本にかかる力を解析して計算する「許容応力度計算」と、現時点で最高等級の「耐震等級3」はどちらも必要不可欠な基準です。
5、 断熱等級6以上(Ua値0.46以下)
住まい手の日常生活に大きく影響を与えるのが、建物の断熱性。
これまで当たり前のように作られてきた「夏暑く冬寒い日本の家」は、もはや忌むべき存在です。
地域の気候風土に合わせ、適切に断熱された住まいは、そこに住まう人々の心地よさを生み出し、健康にも寄与します。屋内の熱中症やヒートショックを防ぐためにも、断熱性能の高い住まいが求められているのです。
また、エネルギーコストが上昇し続けている昨今、燃料をあまり使わずに室内を冷暖房できるのも家計防衛の術の一つ。
人にも社会にも優しい住まいを作るなら、住まいの断熱性も意識すべきです。
6、気密性能 C値1.0以下
気密性能とは、住まいにおける「隙間の小ささ」のこと。これもまた、住まいの重要なファクターです。
いくら断熱材を厚くして断熱性を高めても、隙間が大きければその効果は半減します。家中の隙間から冷暖房した空気は逃げていきますし、逆に夏の暑い外気や冬の寒い外気も無尽蔵に入ってきてしまうからです。
使う断熱材の量や面積で算出できる断熱性能と異なり、気密性能は現場での施工精度が命。断熱材や気密シートなどをきっちり施工することでしか、隙間の小さい家はできないのです。
当会では、気密測定を実施し、その施工精度を実測することを最低基準としています。
7、過酷な状況下での結露計算
住まいの大敵は「水」。構造材や部材が濡れてしまうと、シロアリの被害を受けやすくなったり、木部が腐朽することの原因になったりするからです。
住まいで発生する水には「雨漏り」や配管等からの「水漏れ」がありますが、それらと同等に対策すべきなのが「結露」。結露は、内外の温度差と、空気が含有している水蒸気の量によって水滴が発生する現象を指しますが、馴染みのない物理現象でもあるため、住宅建築においては適切に対策できていないケースがほとんどです。
壁を構成する材料の熱抵抗値や透湿抵抗値を参照し、夏も冬も、壁の中で結露が起きないように厳密に計算することで、建物の結露リスクを大幅に減らします。
8、地域材利用
関西を始め、日本には優良な森林資源の産地が無数にあります。
日本の気候風土の中で育ち、日本の家づくりに最も適しているのがそれら、全国各地の地域材。長く快適な住環境を実現する上で、なくてはならないものだと考えています。
また、国内で伐採・製材・流通されることはつまり、輸送エネルギーが少なく、環境負荷の低減にもつながりますし、林業や製材業を支え、地域経済の循環を生み出すことにも直結します。山が健全に保たれれば、災害防止や水源の養生にもつながります。
地域材を使う家づくりは、自然と共生しながら、未来世代へと続く持続可能な暮らしの基盤づくりなのです。